電子コミック大全運営です。今回は「タコピーの原罪」を語ります。タイトルから受けるポップな印象とは真逆の、重くて暗くて——でも目が離せない作品です。ネタバレを含みますのでご注意ください。
⚠️ この記事はジャンプ+掲載「タコピーの原罪」のネタバレを含みます。未読の方はブラウザバック推奨です。
あらすじ
ハッピー星からやってきた宇宙人・タコピー。「ハッピーどうぐ」を使ってみんなを笑顔にすることが使命の彼が地球で出会ったのは、学校でいじめられ、家庭にも居場所のない小学生のしずかだった。タコピーはしずかを幸せにしようと全力を尽くすが、人間の心の複雑さをまったく理解できない純粋な介入が、物事をどんどん深みへ引き込んでいく。
かわいい見た目のキャラクター、どこか見覚えのある「道具」の数々。でも物語が進むほど、この作品が描くのは「子どもの世界に存在するリアルな暗さ」だと痛感させられます。全2巻完結。
フィクションとは思えないリアルな絶望

この作品の怖さは「ありえない話」ではないことです。いじめ、家庭環境、親との関係、子どもが抱えるどうにもならない閉塞感——どのエピソードも「日本のどこかに、今も起きているんじゃないか」と思わせるラインで描かれています。
フィクションとしての大げささを排して、地味に、じわじわと暗くなっていく展開。だからこそ読んでいて本当に絶望するシーンがある。「これは漫画だ」と自分に言い聞かせないと追いかけられないような重さがありました。
テーマが重すぎると感じる人がいるのも理解できます。でも、この作品が多くの人に刺さったのは、その「重さ」がリアルだったからだと思います。
タコピーへのイライラ(笑)——純粋さは時に凶器

主人公のタコピー、最初は本当にかわいい。愛嬌があって、一生懸命で、しずかのことをひたすら心配している。
でも読み進めていくうちに、だんだんイライラしてくるんですよね(笑)。
タコピーは人間の感情をまったく理解できない。「ハッピーにすれば解決」という単純な思考で動き続ける。その無邪気な介入が、複雑な人間関係をかき回し、時に取り返しのつかない方向に進んでしまう。
悪意がないからこそ止めにくい。善意で動いているからこそタチが悪い。純粋さが凶器になるという描写が、この作品の核心のひとつだと思います。「なんでそこでそれをするの!」と何度もなりました(笑)。
視点が変わると「悪役」が入れ替わる——この体験が圧倒的

この作品でいちばん印象に残ったのが、視点の切り替えによるキャラクター印象の逆転です。
序盤はしずかの目線で物語が進みます。そのため、まりなはどう見ても「いじめっ子」「悪い子」に見える。読者もそう感じながら読み進めるはずです。
ところが、まりなの視点になった瞬間——しずかが「怖い子」に見えてくる。
「あれ? さっきのシーン、こっちから見るとそう見えるのか」という体験が、読んでいてリアルに衝撃でした。これは現実でも同じことが起きていて、誰から話を聞くかで、同じ出来事の印象が全然変わる。どちらかが一方的に「悪」なわけじゃない。それをここまで鮮やかに体験させてくれる漫画は珍しい。
しずかとまりな、ふたりともに事情があって、ふたりともに傷がある。それが見えてきたとき、「どちらかが正しい」という読み方ができなくなってしまう。この感覚が、この作品最大の魅力だと思います。
ハッピーエンドじゃない終わり方が正解だった

結末について。この作品、完全なハッピーエンドではありません。
あれだけ暗い物語を「全員ハッピー」で終わらせるのは、正直無理がある。登場人物たちの生まれも育ちも、根本的には変わっていない。でも、みんながかかわり合って、少しだけ前を向ける場所に着地した終わり方だったと思います。
「きれいに終わらせない」ことへの誠実さが、この作品全体の誠実さと一致していて、読後にじわっと来ました。重い話だからこそ、リアルな着地点でよかった。
漫画 → アニメの順番で両方楽しんでほしい
アニメ版も配信されています。原作にとても忠実で、さらに映像ならではの肉付けがされていて見やすいです。
個人的なおすすめは、まず漫画を読んでからアニメを観ること。原作の余白をアニメが丁寧に補完してくれているので、漫画を読んだあとに観ると「あのシーンがこう描かれてた」という発見が楽しめます。どちらか片方だけでも十分面白いですが、両方体験してほしい作品です。
まとめ
「タコピーの原罪」は重い。でもその重さがリアルで、だからこそ読む価値がある作品です。タコピーのかわいさとイライラ、しずかとまりなの視点逆転、誠実な終わり方——どれをとっても「一度読んだら忘れられない」体験になると思います。全2巻完結で読みやすいので、まだ読んでいない方はぜひ。
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※本記事はジャンプ+掲載「タコピーの原罪」の感想・考察です。作品の著作権はタイザン5先生・集英社に帰属します。記事内で引用している画像の著作権も各権利者に帰属します。
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